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2023/10/01

こころの音色 ~日々の暮らしの中で~ 90

NHKの朝のドラマ『らんまん』が最終回を迎えました。ちょうどこの時期と重なって『植物はすごい』

━生き残りをかけたしくみと工夫━(中央公論新社発行 田中修著)を読み返していました。

主に、身近にある野菜・果物・草花や木等を中心に、種の保存のために生命体としての適応と、働きが分かりやすく書かれています。

 

本の はじめに のページには、田中氏は次のように述べています。

『私たちは、「科学が発達している」と誇りにしています。ですから植物たちのたった一枚のちいさな葉っぱが、毎日、太陽の光を受けて行っている反応くらいは、容易に真似できると思われがちです。ところが、「どんなに費用がかかってもいいから、水と二酸化炭素を原料にして太陽の光を使ってデンプンを生産できる工場を建てて下さい」と誰にお願いしても、引き受けられる人はありません。植物たちの一枚の小さな葉っぱがしている反応を、私達人間は真似することができないのです。』      《中略》

植物たちが環境に適応し逆境に抗して生きていくために持っているしくみの ”すごさ”

に興味を持って下さい。                                       《後略》

 

最終のページ おわりに は実に感動的な一文が書かれています。

 

私達は、植物たちを五感で感じます。  《中略》   ほとんどの場合、私たちは本気で植物たちに腹を立てることはありません。なぜなら、五感で感じた植物たちを ”味わう” のは ”心” だからです。《中略》植物たちが、私達と同じしくみで生き、同じ悩みを抱え、その悩みを解くために懸命に努力している  云々  《後略》   

 

植物に関しての本ではありますが、畏敬の念を持って生命体と向き合うお人柄が伝わって来ます。何度も『すごい』『すごい』『すごさ』の言葉が出てきます。あまりにもすごくて、それ以外の言葉では表現のしようがないのでしょう。私にとっては、植物に対しての向き合い方や、感じて動くこころをもった田中氏に『すごさ』を感じます。

 

この頃特に生命体である ”人” の本質的なこころの働きや、『自分以外の他者との関係があって ”人間になる”』 に注目している私にとって、 心揺さぶられる文章です。悩み、葛藤が絶えることなくやって来る人間関係の中で、「環境に適応しながら、生きてある毎日をこころで充分に味わって!」と語りかけてくるようです。知覚し心動かし味わっているのは、どの様な味わいであろうとも、自分のこころです。私達人間の多くは、自分の足で移動し、環境を変えることもできます。行動し五感で感じながら、味わうこころを豊かに育てていきたいものです。

 

(若)2023年9月30日  筆