松戸市にお住まいの、恩師 小河豊先生がご逝去されたことを知ったのは、最近のことです。亡くなられたのは7月27日とのことです。私が、髄膜腫の摘出手術をうけ退院して6日目のことでした。先生は90歳を超えられておりました。
私の手元には先生からのお葉書きが残されています。
『私の年齢相応の元気をいただいています。』との書き出しから始まる文章から、このようにサラリと在るがままの姿を受け容れて、そのまま言葉にされる先生の凄さが伝わってきます。
先生との出会いは35〜6年も以前のことです。エンカウンターグループ・ワークショップで世話人として御出でいただいた時が初対面でした。4日間のワークを終え感謝の気持ちをお伝えした時に、先生は握手をした手に力を込めて一言おっしゃいました。「わたくしとあなたは前世にお目にかかっています。」と…。そう言わずにはおられなかった先生の在り様を、当時はとんと分からない私でしたが、先生御自身が何か私を通して湧きあがって来た情動に懐かしさを覚え、出会われておられたのだなぁと、今の私には分かるようになりました。
その後道内で行われた先生のワークショップには、あちらこちらで参加させていただきました。カウンセリングを学び始めての4〜5年目頃の私はただただ感動を覚え『分かりたい、その感覚に触れていたい』の連続でした。しかしその後の数年間は先生と向き合うことの恐ろしさを覚え、ワークには出席するけれど、心では逃げ回っている私自身を感じていました。嘘偽りなく自分を直視する恐れから逃げ回っていました。そのことを充分にさせて下さった唯一の先生でした。
先生の他者と向き合われる揺るぎの無い厳しい姿勢と、言葉の一つ一つに込められるお人柄は、私のカウンセリングの方向性を決定づけた、非常に重要な体験となっています。先生を通し『人間としての私』を知る体験を随分させていただきました。否 このように書かせていただく最中も、亡くなられた後にもかかわらず「己を知れ」「あなたは何者だ…。」と少し意味ありげに微笑みながら、目はとても厳しく問いかけてくる先生がやってきます。 出会っています。 有り難いことです。
小河豊先生に心からの感謝と、ご冥福をお祈り申し上げます。 合掌
(若)2023年10月27日 筆