「黒豆を炊きながら」
数年前、私の作ったおせちの黒豆を食べた友人が、とても気に入ってくれたので、それ以来年末に黒豆を炊いてお裾分けをするのが恒例になっています。
『調味料を加えたぬるま湯に洗った豆を入れて一晩漬け置き、翌日火にかけ灰汁を取りながらコトコトと豆が柔らかくなるまで煮ていき、その後は煮汁に浸かった状態のまましっかり冷ます』と文字にすればこんな感じの工程。
一晩漬け置いた豆は、水分を吸収してふっくらと見えますが、まだまだ固い状態です。
火にかけ、灰汁が出ればすくい、豆は煮汁に浸かった状態をキープして、その煮汁は沸騰しないようにコトコトと…豆の見た目は、さほど変化していきませんが、一定の条件下で少しずつ柔らかくなっていくのを待っている。ただ、この『待つ』という工程、ほったらかしの放置プレイでは、やはりマズイ。
ずっとお鍋に張り付いている必要はないけれど、時間と共に煮汁の量や豆の柔らかさは変化しているので、時々は覗いて今の状態を確認し、その都度手立てをうつ必要があります。
豆の大きさや乾燥具合などによって柔らかく煮えるまでの条件は変わってきますし、こちらの都合で急いでいるからと火力を強めたとて、早く煮える訳では無く、残念な結果になるだけ。
結局は豆しだい…お任せするしかありません。
豆本来の味を活かしつつ仕上げるためには、豆の状態に合わせて、最初のきっかけを作り、関心を寄せつつ見守る、必要な関わりを持つ、そして、お任せしながら待つ…これらすべてが大事なプロセス。
何気なくやっていた作業工程を、私と豆との関係として考え、私と○○との関係に置き換えることもできそう…と黒豆を炊きながら学びに繋げる自分がいました。
お蔭さまで今回もおいしく炊けた黒豆は大絶賛され、次回のご予約もいただきました。
ありがたいことです。
(N)