円山動物園に行ってきました その②
前回に引き続きお付き合いください。
給餌展示など、動物園側の工夫で動物たちの生態を身近に観ることができる展示方法は、一部休止になっていました。残念ではありましたが、今は仕方ありません。
そんな中で、私を釘付けにしてくれたのは、2/3生まれのオラウータンの赤ちゃんでした。
『可愛い』と見た瞬間、声に出していました。ちょうど座れるスペースがあったので、そこに座り、ややしばらくその姿を観ていると、沢山の親子連れが目の前で足を止めています。
大人と子供の組み合わせで、大人が先にその赤ちゃんに気づいた場合、必ずといっていいほど自分の子供に向かって『可愛いね』と話しかけていました。その声かけに反応して頷きながらにっこり微笑みあっている、その光景を微笑ましく見ながら『本当に可愛いよね~』と心の中で呟いていました。
その時、言葉を話し始めた位であろう小さい子がパパに抱っこされ、ママから『可愛いね』と話しかけられました。その子の目はオラウータンの赤ちゃんに釘付けの状態のまま、ややしばらくしてひとこと『しゅごい(凄い)』と言葉にしたんです。『可愛い』より『凄い』という表現になった?私はちょっと興奮しながら、改めて他の親子を見てみると、『可愛いね』と一緒に言いながら見ているのは、一定の年齢(推定4~5歳位)以上の子供たち、それよりも小さい子たちは、大人からの声かけに反応するよりもオラウータンの赤ちゃんに目が釘付けとなっている子が多い印象で、言葉もなく夢中になっているようにも見えました。
その子たちが観て感じているのは、どのような世界だったのでしょうか?
言葉はその音声に意味を含めて表現されています。言葉の意味は国語辞典で調べられますが、全ての単語の意味を調べて使っている訳ではなく、覚えた時の自分の感覚で使っていることも多いので、改めて『可愛い』という単語を調べてみると、小さい子たちの反応が私なりに理解できた気がします。
言葉を覚え始めの小さい子でも、その言葉を使った周りの大人たちの感情を一緒に取り入れながら音声とその意味合いを記憶し、使い方を学び、自分の世界にあった表現をしているのだということが分かりました。
同じオラウータンの赤ちゃんを観ながら出て来た『可愛い』と『凄い』。表現の違いにハッとしたことがきっかけでしたが、では、同じ言葉で表現した人たちは?
表現が同じ言葉であったとしても、使ったその人が観て感じている世界や、言葉の意味合いには、それぞれ違いがありそうです。例えば5歳と50代が、同じ表現をしたからといってその中身(感じている状況)は違うでしょう…ということです。当たり前と言ってしまえばそうですが、一人の人が使う言葉でも、その言葉に含まれる味わいや広がりは、年齢や体験を重ねていきながら変化し深みを増していきます。だからこそ、その方のこととして、丁寧にお話を聴かせていただくことが大切なんだよな…そんなことを小さい子たちの言葉をきっかけに、改めて自分の中に置くことができました。ありがとうね。
2021・3・8(N)