カウンセリングの目的・目標
カウンセリングは、関係の中から、クライエント(以下、Cl)がその人らしくなっていく過程を体験していただくこと、心理的適応を目指すことを目的とする。さらには、その体験過程を経て、人格の変容、すなわち、その人がその人らしく成長していくことを目指すことが目標であると考える。
まず、カウンセリングにおけるClとは、悩みや課題を抱え、心理的に適応できていない状態の人を対象としていると理解している。
関係とは、カウンセラー(以下、Co とする)とCl との間の関係を指し、CoはClが恐れることなく安全に話すことのできる場や関係のことである。ClにとってCoとの関係が安全であると、自分の気持ちや考えを素直に話すことにつながると思われる。心理的不適応状態のClが、ありのままの自分の気持ちや考えを言葉にすることで、改めて、自分のそれを実感したり、今まで無意識であった自分の感情に気づいたりすることができると思う。自分の気持ちや考えを感じ、改めて自分を知っていく、そしてClなりの適応の仕方で、自分を認めていくような過程を体験していただくことで、心理的適応が図られると考える。しかし、体験の中での気づきの部分がClにとって必ずしも心地よいものとして感じられない可能性が考えられる。どのような時か。それは、感情、感じ方や考えが今まで培ってきた自己概念と一致していないときに生じるものと考える。気づきが心地よくないものとして感じられたり、はっきり実感できなかったり、自分の意識の外側に無意識におかれたりする 等、Clによって様々な反応が推測される。このような状態から、その人なりの適応が図られる過程において、自己概念が変化、再構築されるものと理解している。したがって、悩みが悩みでなくなる、別の似たような事柄が生じても、既に自分なりの適応の仕方があるので、新しい悩みにならないことが可能となりえる。このような在り様が、人格の変容というカウンセリングにおける目標であると自分は考える。
カウンセリングの目的・目標の為には、カウンセラーはどのような聴き方(在り様・態度)が望ましいか
カウンセラー(以下、Coとする)は、クライエント(以下、Clとする)の話を聴かせていただく際、問題の解決を図るための働きかけをするのではなく、Clが自身の悩みや問題と対峙することができるような聴き方が望ましいと考える。問題の解決のみを図った場合、Clが抱えている悩みや問題を取り除くことに焦点が当てられると思う。取り除くことができると、その時点でのClの問題は解決し、悩みも解決したように感じる。しかし、なぜ悩みとして感じられてい たかというClの感情や考えが蔑ろにされていると思う。結果として、悩み、考え、成長するClの時間を奪ってしまっている。したがって、別の似たような問題が生じた場合、新たに悩む可能性が考えられる。悩むこと自体に良い、悪いはないと思うが、その人に代わって、悩みを解決するような働きかけは、その人がその人らしく成長していくというカウンセリングの目標とは離れてしまうと思う。
では、自分にとって問題解決を図る働きかけとは、どのようなものであるか考えてみる。それは、相手の話を勝手に評価したり、助言したりしているときであると思う。相手を思いやっている、大事であるからという自分勝手な理由で、相手の気持ちを確認せずに、自分の思いや 考えを押しつけてしまっているときである。そんなときには、自分の伝えたいことがなかなか相手には伝わらないし、相手からも「全く話を聴いてくれない。そんなことが話したいのではない、伝わらない。」等と言われ、関係が悪くなる場合が多い。こちらの自分勝手な想い、言葉や態度で、相手を傷つけてしまうことがあると思われる。いま、言葉にしてみて、実際相手を傷つけているかはっきり感じられていない自分がいることに気づく。傷つけていることにさえ気づけない 自分、それだけ相手の話を聴けていない自分がいる。自分の気持ちや考えを伝えたい思いが強くなるほど、相手の話を聴かせていただくことから離れてしまうよ うに思う。自分が相手のためにという気持ちを持っていたとしても、その思い通り、相手を大事にすることに繋がらないようである。相手の話を聴くことは、その関係、その人を大事にすることに似ていると自分は思う。相手のありのままを(気持ちや考え、相手がいま感じているものを感じられているままに)感じられたり、確認したり、教えていただくような姿勢がCl の話を聴かせていただくときに必要なCo の在り様であると思う。いまの自分に、その在り様を言葉で表現することは難しい。自分にとって、相手の話を聴かせていただくことは難しい。相手の感じているものを、そのまま教えていただきたいと思うが、自分の感情や考えと混同し、すぐに自分勝手な理解をしてしまう。しかし、自分がいま感じられるところで、相手の気持ちや考えを確認したり、教えていただきたいという思いでたずねることが、相手の話を聴かせていただくことに繋がると思われる。相手のことは、結局、相手に教えていただくしかないように思う。相手の話を否定も肯定もせず、ありのままを認めさせていただくような聴き方をすることで、Clが、Cl自身でさえはっきりしていなかった自分の感情や考えに気づくと同時に、悩みや問題と対峙することができるように思う。Clが悩み、考え、決断し、その人らしく行動していくことが、Clの成長に必要な時間であると自分は考える。
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